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Location:ホーム実験手法別製品・技術情報タンパク質サンプル調製・前処理

第2章
サンプルの採取、安定化およびタンパク質抽出(5)

タンパク質の可溶化 (2)

界面活性剤

添加剤を加えるとタンパク質の可溶性をさらに高めることができます。添加材の1つである界面活性剤は、親水性を示す極性基またはイオン基(頭部)と疎水性を示す炭化水素鎖(尾部)で構成される両親媒性分子です。水溶液中では、親水性の頭部と水分子との間に双極子-双極子相互作用またはイオン-双極子相互作用が生じ、疎水性の尾部はミセルという球状の構造体を形成します。この特性により、界面活性剤は疎水性物質を可溶化します。低濃度では界面活性剤分子は分離しますが、一定の濃度(臨界ミセル濃度、CMC)を超えるとミセルを形成します。ミセルは純粋な界面活性剤のみで存在することも、界面活性剤と脂質またはタンパク質の混合物で構成されることもあります(混合ミセル)。個々の界面活性剤のCMCは、分子の固有の特性、イオン強度および温度などによって決まります。

界面活性剤の分類は、一般に頭部の極性基の性質に基づきます。以下に例を挙げます。

陰イオン性  SDS
陽イオン性  臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)
非イオン性  オクチルグルコシド
両イオン性 CHAPS

炭化水素鎖は、直鎖のことも分枝鎖のこともあり、柔軟鎖、剛直鎖という用語も広く使用されています。

タンパク質可溶化に使用可能な界面活性剤の選択肢は数多くあります。広く使用されている界面活性剤のいくつかを表2.6に示します。使用する界面活性剤は以下の条件を満たす必要があります。

  • 可溶性画分への目的タンパク質の収量が多い。
  • 操作温度においてバッファー溶液に可溶性である。
  • ワークフローの後続ステップで必要な場合は容易に除去できる。
  • 必要な場合は物学的活性を保護する。
  • 不要なタンパク質修飾は起こさない。
  • 分析(例:UVまたはMSによる検出)に干渉しない。
  • ワークフローの他のステップに干渉しない。

例えば、SDSはタンパク質1 gあたり1.4 gでほとんどすべてのタンパク質を可溶化することが知られています (13)。SDSはプロテアーゼを含む大半のタンパク質と酵素を変性し不活化します。SDSは電気泳動(SDS-PAGE)およびウエスタンブロッティングに広く使用されています。ただし、タンパク質を変性させることからタンパク質の機能分析には適しません。RPC担体に干渉するため、RPCによる分析にも適していません。

表2.6 タンパク質研究に広く使用されている界面活性剤

非イオン性 MW(無水状態) CMC2 (mM) 平均ミセル重量
Brij-35 1199.6 0.09 48,000
Digitonin 1229.3 - 7,000
MEGA-8 321.5 58 -
Nonidet P-401 306 0.25 -
n-Nonyl-β-D-glucopyranoside 306.4 6.5 -
n-Octyl-β-D-glucopyranoside 292.4 20-25 25,000
n-Octyl-β-D-maltopyranoside 454.5 23.4 38,000
Triton X-1001 625 (avg) 0.2-0.9 80,000
Triton X-114 537 (avg) 0.35 -
TWEEN 20 1228 (avg) 0.059 -
TWEEN 80 1310 (avg) 0.012 76,000
両イオン性
CHAPS 614.9 6-10 6,150
CHAPSO 630.9 8 7,000
Zwittergent 3-10 307.6 25-40 12,500
Zwittergent 3-12 335.6 2-4 18,500
陰/陽イオン性
Cetyltrimethylammonium Bromide (CTAB) 364.5 1 62,000
Cholic acid, sodium salt 430.6 9-15 900
Deoxycholic acid, sodium salt 414.6 2-6 1,200-4,900
Lauroylsarcosine, sodium salt 293.4 - 600
SDS 288.4 7-10 18,000

1 Nonidet P-40, IGEPAL CA-630, and Triton X-100 are liquid detergents of similar structure and average formula weight
2 Temperature: 20~25℃

界面活性剤選択ではまず、過去に同様の事例がないか文献を検索します。次に可溶化の最初のステップに使用する界面活性剤を選択しますが、これは経験的に行われることが多く、何種類かの界面活性剤についてスクリーニングを行い、目的タンパク質の収量を分析します。界面活性剤/タンパク質比が重要であり、可溶化中には過剰量の、例えばタンパク質(および脂質)の量の2~3倍の界面活性剤を使用する必要があります。アーティファクトとタンパク質修飾を防ぐために、最高品質の「タンパク質グレード」の界面活性剤を使用することが重要です。例えば、頭部にポリオキシエチレンを持つ界面活性剤には、酸化を引き起こす過酸化水素と有機過酸化物が含まれていることがあります。

界面活性剤によって選択的に抽出される脂質とタンパク質の種類が異なり、可溶性力価も異なります。この差は、界面活性剤分画の違い(differential detergent fractionation)で明らかにされています (14)。

多くの場合、界面活性剤は抽出ステップにのみ使用すれば十分で、ワークフローの全ステップを通して使用し続ける必要はありません。ただし、膜タンパク質の場合、タンパク質と界面活性剤が混合ミセルの中で複合体を形成するため、全ステップに界面活性剤を使用する必要があります。

波長特性

Triton X-100などの芳香族を含む界面活性剤は280 nmで大きい吸光度を示します。

二価陽イオンとの適合性

N-ラウリルサルコシン酸塩などの長鎖カルボン酸や胆汁酸塩には、二価陽イオンと沈殿物を形成する性質があります。ただし、コール酸塩などの胆汁酸塩や、CHAPSやCHAPSOなどのコール酸塩誘導体は、二価陽イオンと沈殿物を形成しません。

可溶化のpH依存性

カルボン酸を含有する界面活性剤は、弱酸性pHでプロトン化して不溶性になる可能性があります。

温度の影響

Triton X-100、Lubrol PXなどの非イオン性ポリオキシエチレンエーテルでは、温度変化に伴いミセル重量が変化します。温度が線形に上昇すると、ミセルが指数関数的に膨張します。このため、界面活性剤が曇点と呼ばれる温度点において非水相として分離します。

カオトロープ

カオトロープ剤は、生物分子内または生物分子間の水素結合を断ち切る物質です。低濃度のカオトロープ剤は選択的可溶化を引き起こします。濃度が高くなると、タンパク質の不活化につながります。抽出効率がもっとも高いカオトロープは、一般にタンパク質の変性をもっとも効率的に引き起こします。尿素およびグアニジン塩酸は広く使用されているカオトロープで、タンパク質の溶解性を高め凝集を最小限に抑えます。タンパク質を十分に変性させるには、一般に6 Mのグアニジン塩酸または8 Mの尿素が必要です。精製グレードの高い化合物を使用する必要があります。

タンパク質の修飾を避けるために、尿素添加後は絶対にサンプルを加熱しないでください。温度が上昇すると尿素が加水分解してイソシアン酸となり、これがタンパク質修飾(カルバミル化)を引き起こします。サンプルに尿素が含まれている場合には、絶対に37°Cよりも高い温度に加熱しないでください。
尿素は非イオン性界面活性剤と複合体を形成し、これがクロマトグラフィー挙動に影響を及ぼすことがあります。界面活性剤の多くは、中程度の濃度のグアニジン塩酸に不溶性です。CHAPSをグアニジン塩酸や尿素と組み合わせて使用すると、凝集しているタンパク質の可溶化に有用であるとされています。

タンパク質サンプルの調製には高品質の抽出バッファーを使用します。また、微粒子を除去するためにろ過することをおすすめします。少量の場合には、Whatmanシリンジフィルターまたはシリンジレスフィルターを使用できます。Whatman Klari-Flexボトルトップフィルターシステムを使用すれば、15 ml~1 Lのバッファーを一度に処理できます。

>>抽出例(1)

 

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