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Gail Sofer画像Gail Soferはバイオテクノロジー/生物学業界で22年以上の実績があり、GE Healthcareのプロジェクトや世界各国のお客さま向けに、主にプロセスバリデーションや規制遵守のサポートを行っています。Gailはバイオテクノロジーコースの講師を10年以上担当しています。またダウンストリームプロセス、ウイルスの不活化、バリデーションに関する数多くの記事や著書があります。さらに各種団体や専門誌の編集委員を担当しています。

・PDA Board of Director
・PDA Biotech Advisory Board
・ASTM subcommittee on Adventitious Agent for Tissue Engineered Medical Products
・Editorial advisory boards: BioPharm, BioQuality, BioProcess International,
・The Scale-up Scientific Advisory Board of Genetic Engineering News

開発段階でのGMP遵守

60年代にFDA(米国食品医薬品局)が発布し、WHO(世界保健機構)によって医薬品や医療器具、食品の品質保証における世界標準として採択されたGMP(good manufacturing practice)は、時代の要請に適合する新たなあり方を常に議論されています。そのため、製造設備から品質管理体制まで、事業者が遵守しなければならない基準の変化を追い、迅速な対応を進めることが重要です。ここでは、弊社Regulatory Compliance(規制コンプライアンス)のDirectorであるGail Soferから、セルバンキング、細胞培養および下流プロセス(downstream processing)におけるGMP遵守の取組みについてご紹介させていただきます。


GMP遵守は多くの国々で法的要件となっており、最近2、3年は実施の重要性がさらに増しつつあります。GMPは臨床試験用医薬品(治験薬)の製造にとって何を意味するのでしょうか。

治験薬の製造段階においてGMPを遵守することにより、確立された手順の欠如、交差汚染に関係する潜在的リスク、製品の有効性および毒性に関する情報の不備、プロセスバリデーションの不足を補うことができます1。実際、プロセスバリデーションが治験薬の製造に際して適切に実施されない場合があります2。そのような問題を防ぐために重要なのは製造担当者の教育訓練、中でも、プロトコールへの適合よりも創造性を尊重する研究室出身の担当者に対する教育訓練です。

臨床試験の初期段階(例えば、第I相・第II相試験)で使用する治験薬の製造において完全なプロセスバリデーションは適切ではありません(実際、不可能な場合もあります)。しかし、安全性に関する一部の側面については対処する必要があります。例えば、滅菌プロセスのバリデーションは既承認製品と同等に実施します。つまり、細菌や真菌の成長阻害アッセイのような滅菌アッセイに対してもバリデーションを実施する必要があるという意味です。ウイルスに対する安全性の確保および他の潜在的に有害な不純物の除去も確実に実行する必要があります。交差汚染を最小限にするには入念な洗浄が必要ですが、FDAガイダンス案に指摘されているように、治験薬製造段階の初期には使い捨ての器具を使用することでCGMP*への遵守を容易に確保することができます3。当然ながら、患者の安全性に対するリスクが最小限に抑えられている限り、規制当局はGMP実施に対する段階的な取り組みを認めています。治験薬における安全性に対する重要な側面としては、以下の項目が挙げられます。

  • 無菌性
  • 製品およびプロセス中間体による交差汚染
  • ウイルスに対する安全性

ユニットオペレーション

ユニットオペレーションとは、生物学的製剤の製造段階で使用されるセルバンキング、細胞培養、回収、精製などの作業単位を指します。治験薬製造の初期段階では、患者の安全性に関する問題を特に重視しながら、各ユニットオペレーションが他に及ぼす影響を考慮する必要があります。

セルバンキング

ICH Q5D(生物薬品製造用細胞基剤の由来、調製および特性解析についてのガイドライン)では、生物製剤の製造に使用する細胞基質に関して言及しています。製品の承認には二層式セルバンキングシステム、すなわちマスターセルバンク(MCB)およびワーキングセルバンク(WCB)の確立が求められていますが、後期段階でWCBを作成するのに十分な量の細胞が確保できるならば、臨床試験初期ではMCBのみを使用することが現実的といえます。新しいMCBは新規製品とみなされるため、製造の最初期であっても、完全かつ十分な量のバックアップ用MCBを確保することが重要です。
ICH Q5Dの適用範囲に関する記述では、製造販売承認申請時に提出すべき情報のうち患者の安全性に関して最も重要な作業は細胞株の特性解析であるとされています。しかし、臨床試験に入る前に、セルバンクの検査だけでなく、細菌、真菌、マイコプラズマおよびウイルスに対するスクリーニングをそれよりも先に実施してMCBの交換を招く事態を防ぐことが賢明です。MCBの交換は細胞の特性解析試験においてMCBに外来物質が含まれることが明らかになった場合に必要となり、その結果、ほぼ確実に毒性試験などの(金銭的負担の大きい)初期試験を繰り返さなければならなくなります。また、新規アッセイの確立や新規ウイルスの発見があれば細胞基質の特性解析を定期的に見直す必要があることを理解しておくことも重要です。

細胞培養

初期のガイダンス案においてFDAは、第III相の主要な(pivotal)試験の間に、増殖中の細胞の安定性についてバリデーションを実施すべきであるとしています。第III相という後期の開発段階で細胞の不安定性が明らかになると、どういった事態を招くのでしょうか。一部の製薬会社は培地を変更して細胞を安定化することを試みていますが、この方法は製品の発現レベル、糖鎖付加などの翻訳後修飾や宿主細胞由来タンパク質の品質・量の変化といった他のリスクをはらんでいます。実際には、プロセス条件下で細胞が安定かどうかを把握するための予備試験を実施する必要があります。製薬会社は細胞培養工程から最大の生産性を得ることを望んでいるため、臨床開発段階ではほとんど常にプロセス条件の至適化を継続しています。このような至適化は内在性レトロウイルスの発現、宿主細胞タンパク質の発現、製品の修飾状態や下流のプロセスに影響を及ぼす可能性があります。

下流プロセス

細胞培養プロセスの変更が下流プロセスに及ぼす影響は、常に把握されているとは言えません。たとえば、細胞培養液に消泡剤を追加したところ、クロマトグラフィーカラムからリガンドであるProtein Aの漏れが増えてしまったが、下流のプロセスが幸いProtein Aを十分に除去するよう設計されており、影響がなかったことがあります。また、バイオリアクターの変更にともない細胞死が増加・DNA濃度が上昇したため、下流工程でDNA除去のプロセスを加える必要があったこともあります。このように、培地を変更すれば、下流のプロセスを再デザインして特定の成分を除去しなければならない場合があります。

細胞培養プロセスの変更、特に細胞の代謝状態やタンパク質の発現速度に顕著に影響を及ぼす変更は、レトロウイルスの発現レベルを変化させることがあります4。レトロウイルス発現レベルが上昇すると、ウイルスに対する安全性を確保するため、下流のプロセスを変更しなければならない場合があります。上流プロセスと下流プロセスの担当者間の連絡が、治験薬製造に適した下流プロセスをデザインする上で鍵となるのです。

下流プロセスでは、細胞培養に由来する未処理のバルク製剤から既知ウイルスおよび候補ウイルスの両方を除去します。ウイルスに対する安全性は臨床試験前に対処すべき重要な問題ですが、第I相試験前にウイルスクリアランス試験で評価すべきウイルスの数については世界的に見解が分かれています。たとえばEUでは臨床試験を計画中の企業に対してガイダンスを提供する試みが実施されています5。米国においては、モノクローナル抗体の臨床試験の留意点について、ガイダンスが策定されています6

規格の範囲でウイルスを除去できるロバストな下流プロセス(頑健性の高いプロセス)の構築に関しては、重要な点が多々あります。GMPが定めているパラメータ範囲によって設計領域(design space)が決定されますが、設計領域の決定には頑健性(Robustiness)試験が必要です。これらの試験には、製品の品質に関する様々なパラメータ、その範囲およびその影響を評価するため、DOE(Design of Experiments:実験計画法)などの統計学的手法を使用します。クロマトグラフィーにおいては、設計領域としてタンパク質負荷量、流速、バッファーpH、電導度の上限・下限などが考えられます。適切な設計領域を決定するには、開発に際して個々のユニットオペレーションがプロセスに組み込まれている理由を理解しておくことが必要です。

一般に第III相試験ではプロセスをスケールアップしますが、スケールアップに際しては通常は多少のプロセスの再調整が必要となります。スケールアップを成功させるためには、プロセスの生産能力を把握することが大切で、プロセス開発中に製造装置とプロセス内管理の両面から評価することが必要です。多くの場合、プロセス内の分析能力は開発スケールと生産スケールで異なります。スケールアップを検証し必要な調整が終了すると、プロセスバリデーションを実施することができます。この段階ではCGMPへの完全な遵守が必要とされ、プロセスバリデーションにおいて小スケール・製造スケールの整合性をとることが求められます。規制当局から承認されるためには、小スケールでのデータが製造スケールでも再現されることを示すことが必須となります。

結論として、GMPの段階的な実施は容認されていますが、患者の安全に関わる案件はすべて臨床試験前に確認する必要があります。さらに、開発段階ではプロセスを至適化するたびに安全性に関わる問題を再検討する必要があります。例えば、第I相・第II相試験中のプロセス至適化の際に細胞への給餌方法を変更した場合、ウイルスクリアランス試験の再実施が必要です。患者の安全性に対するリスクの許容レベルは、適応症や各国の規制によって左右されます。臨床試験を開始するための申請書を提出する前に規制当局から情報を入手しておくことも非常に有効であると考えられます。



* 米国ではGMPの前にC(current)を書き加えます。GMPは現行版である必要があります。バイオテクノロジー医薬品(生物製剤)の治験依頼者は、患者の安全性に対しては実行可能な限り最新の方法を採用することが求められます。

 参考文献

1 EU GMP Annex 13. Manufacture of Investigational Medicinal Products; EU 07/03.

2 ICH Q7A, Good Manufacturing Practice Guide for APIs; November 2000.

3 US FDA. Guidance for Industry, INDs ? approaches to complying with CGMP during phase 1; January 2006.

4 Brorson K et al. ‘Impact of Cell Culture Process Changes on Endogenous Retrovirus Expression’; Biotechnol. Bioeng; 80(2002)257-67.

5 Brorson K et al. ‘Viral Safety Evaluation of Biotech Products Used in Clinical Trials’; PDA Letter, January 2006, pp12.

6 US FDA. Points to Consider in the Manufacture and Testing of Monoclonal Antibody Products for Human Use; February 1997.

7 ICH Q8 Pharmaceutical Development; Nov 2005.


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