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クロマトグラフィークロニクル(1) - FPLC開発秘史

FPLCの雄姿。かつてのタンパク質研究の最前線で戦いました。

タンパク質などの生体分子専用の高速・高分離能精製システム「FPLC」が初めて紹介されたのは、1982年3月9日、′82 Pittsburgh Conferenceの展示会場でした。当時の技術ではタンパク質の精製には何日も、場合によっては何週間もかかるような繁雑な操作が必要であることが「常識」でした。そんな「常識」に挑戦し、タンパク質を数十分で精製するという夢物語を実現した技術者たちがいました。その中の一人、John Brewerが当時の試行錯誤を後に書き残しています。

適したものがない。。。

当時のタンパク質精製の状況がどのようなものだったかというと、Sephadex G-200 Superfineを充填したカラムの長さたるや1メートル、分離に要する時間はたっぷり2日間、しかもカラムが2日間もつかどうかは分からずスリル満点、という大変なものでした。

そんな中、タンパク質を扱う研究者やファルマシアの技術者は、医薬品業界で分析機器として定着してきたHPLCを何とかタンパク質精製に応用できないものかと試行錯誤していましたが、それは失敗の連続でした。

問題は主に担体の性能と機器の性質に起因していました。

既存の担体が使えない、、、
分析用HPLCに使われていたシリカ系有機化合物の担体は物理的な強度は十分なため任意の流速は得られるのですが、、タンパク質を吸着しすぎて回収率があまりにも低く実用になりませんでした。
一方、その時点で市場に出回っていたSepahdexなどのタンパク質用の担体では強度が足りず、十分な流速が得られませんでした。
HPLC用の機器もアウト、、、
HPLC用の機器は有機溶媒の使用を前提に開発されていたため、ごく平凡なバッファーを流しても錆びてしまいました。

Tris-HClでも錆付いてしまうようなポンプであるにもかかわらず実際に流したい溶出液は強烈なグアニジン塩酸、サンプルはHPLC用に調製された低分子化合物などではなく組織抽出液、しかも分析ではごく普通の10 mlなどではなくリットル単位で、となると分析用のHPLCの用途としては特殊すぎたのです。
最終的にはファルマシアの技術者たちは既存のHPLCをタンパク質精製用に改良することをあきらめ、タンパク質精製に適した新しいシステムの開発へと進んでゆくことになりました。

つくるしかない

担体

Mono Beads
Mono Beadsの電子顕微鏡写真

こうして新システムをつくることにした彼らは、まず最初にもっとも頭の痛い問題である担体を何とかしようと試みました。

既存のタンパク質用担体は高流速に耐えられないため、それまでのタンパク質用担体についての常識を捨てて担体設計からやり直すことにしました。そうして候補にあがったのが、合成ポリマーでした。当時の合成ポリマーは非特異的な吸着が多くタンパク質の精製には使えないと考えられていました。しかし、開発チームは適切な誘導体化さえ行えれば、非特異的吸着の問題はクリアできるものと信じて検討を続けました。

やがて開発チームは、ノルウェーのUgelstad教授のグループがクロマトグラフィーに適したサイズの単分散ポリマービーズの製法を発見したことを聞き、Ugelstad教授との共同研究を開始しました。この共同研究の結果、タンパク質を精製するための修飾が可能な多孔性のの単分散ポリマービーズが開発されました。この成果は最初のMono Beadsの基盤となりタンパク質精製用のクロマトグラフィーシステムを支えることになりますが、その当時はMono Beadsの使用に適した機器がなく、せっかくの高性能も生かされない日々が続きました。

ちなみに、Mono Beadsの技術は今日のMono Q、Mono SMono Pに受け継がれ、その原理はSource・Resourceにも活かされています。

クロマトグラフィー機器

既存の分析用HPLCに使われるステンレスではタンパク質の精製に使う溶液に耐えられないことが分かっていたので、彼らは材質を変えることで腐食の問題を解決しました。最終的に製品化されたクロマトグラフィーシステムは、ステンレスではなくガラスとプラスチックとチタンでつくられていました。

今ではÄKTAユーザーの皆さまにもおなじみのサンプル添加器具Superloopが開発されたのもこの時です。Superloop開発のヒントになったのは、なんと自転車の空気入れだったそうです。

発売までに七転八倒

こうして何とかプロトタイプシステムをつくりあげた開発チームは、1981年5月に世界中の支社から人を集めて意気揚々とデモに臨んだのですが、油断大敵。彼らはこの時初めて、フッ素化合物を長時間使用するのはよろしくないと気が付きました。フッ素イオンはガラスを溶かすことをすっかり忘れていたのです。結局、ガラスのシリンダーが溶けてしまい、最初のデモは失敗に終わりました。

その後も技術的問題が次から次に発覚し、当初は1981年9月の発売を計画していたものの、1982年3月まで発売がずれ込んでしまいました。

また、問題は技術面以外にも潜んでいました。発売日が1982年3月9日と決定した時点でも、まだ名前が決まっていなかったのです。何百という案の中から、開発チームはPhast Systemという名前を選びましたが、この名前は評判が悪く、紆余曲折を経てFPLCという名前が生き残ったのでした。

予想外!

こうして発売されたFPLCですが、発売と同時に爆発的人気を博した、などということはありませんでした。それまで分析用HPLCで何とかしようと試行錯誤したり、長大なカラムと格闘したりしていた研究者は、ゲルろ過ではなくイオン交換、しかも担体は合成ポリマーのシステムを使って、たった20分で10 mgのタンパク質を高純度で精製できるなどという夢物語を信じようとはしなかったのです。

しかし、FPLCのユーザー第1号であるウプサラのPorath教授が、研究者たちの「予想外」が現実であることを実証してみせると、その後は高速・高分離能のタンパク質精製システムとして急速に世界中の研究室に広まってゆきました。

そして今日、FPLCの技術を受け継ぎさらに洗練したÄKTAは世界中で10万人の研究者の研究を支えています。


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