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DNAの書き換えの遺伝子技術

DNA書き換えの遺伝子技術、可能になる!?
ゲノム編集のテクノロジーに挑む

Jun 26, 2015

髪の毛から血液型に至るまで、あらゆる遺伝情報を担うDNAを書き換える遺伝子技術がいよいよ現実に!「CRISPR-Cas9システム」を含むゲノム編集技術を開発中のGEヘルスケアのアニャ・スミスさんからこの革新的な技術について聞いてみます。

つき詰めて言えば、私たちを作り上げているものは遺伝子のコード。一般的に人体は37兆個にもおよぶ膨大な細胞で構成されていて、その細胞ひとつひとつが、ひとりの人間を形成するうえで必要な情報を保有しています。

生物学の授業で習ったとおり、遺伝情報を担う二重螺旋構造のDNA(デオキシリボ核酸)は、髪の毛や肌の色、血液型に至るまで、あらゆる情報を30億個の記号で記述しています。言ってみれば、DNAは私たちにとって最も重要な身分証明書。それは突然変異や損傷を除けば、生まれた日から変化することはありません。

しかし、この定説が今、変化しようとしています。世界中の科学者たちが「CRISPR-Cas9システム」という強力な最新ツールの実験を進めており、その結果、人間や動植物のDNAの欠陥、望ましくない部分を書き換えることが、技術的には可能になりつつあるのです。

「今では、ゲノムに直接変化を与える簡単な方法があります。細胞自体に直接働きかけて、遺伝子を変えることができるんですよ」。そう語るのは、GEヘルスケア・ライフサイエンスのダーマコン (Dharmacon)ユニットで、研究開発責任者を務めるアニャ・スミス。彼女たちは、「CRISPR-Cas9システム」を含む遺伝子発現およびゲノム編集のテクノロジーを開発しています。

HIVの治療に期待される遺伝子技術

最上部:DNAの図(画像:ゲッティ イメージズ社)
上:細胞を攻撃するヒト免疫不全(HIV)ウイルス(画像:シャッターストック社)

革新的な遺伝子技術の実現へ

遺伝子工学は、1970年代に科学者たちが細菌やウイルスから抽出したDNA断片を他のDNAに挿入することに成功して以来、急速な進歩を遂げてきました。生命の設計図である遺伝子はすべて、一見シンプルな4つの記号で記述されています。すなわち、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の4種類の塩基から成る核酸です。

私たちが遺伝子と呼ぶもの、すなわち黒い瞳や血液疾患である血友病といった遺伝形質の基本単位は、これらの文字の配列によって表記されます。

こうしたコードを解読する技術はDNAシークエンシングと呼ばれ、1970年代に普及し1980年代に加速度的に発展しました。そして2003年、米国立衛生研究所および民間企業であるセレラ・ジェノミクス社の科学者たちが、史上初となるヒトゲノムの全塩基配列の解読をほぼ完了したと発表しました。

このあと、研究ペースはさらに加速します。それは、RNA(リボ核酸)干渉と呼ばれる、特定の遺伝子の働きを効果的に抑制することを可能にする技術が発見されたため。研究者は遺伝子にサイレンシング技術によってその働きを制御することで、遺伝子に何が起きるのか、その機能を把握することができるようになったのです。その結果、がんから神経変性疾患まで、さまざまな疾患に関連する遺伝子を具体的に解明する発見が相次ぎました。この技術を発見したアンドリュー・ファイアー氏とクレイグ・メロー氏は、2006年にノーベル賞を受賞しています。

それ以前にも、宿主細胞が外来DNAの情報に従って、外来タンパク質を完全に生成できるよう、外来DNA配列を宿主ゲノムに挿入するという難易度の高い技術の改良が進められていました。この技術によって、バイオ製薬会社では体外でインスリンを大量生産できる細菌培養が可能になりました。

そして2012年、エマニュエル・シャルパンティエ氏とジェニファー・ダウナ氏が「CRISPR-CAS9システム」を開発すると、研究者は個々の遺伝子を正確に編集・修正できるようになりました。両氏の革新的な研究が、遺伝子工学に新たな革命をもたらしたのです。

細菌のDNAで分かったCRISPR-Cas9システム

細菌の画像(画像:ゲッティ イメージズ社)

ゲノム編集技術の道具は、はさみ、縫い針、糸?

2000年代初頭、生物学者は細菌および古細菌のDNAに、短い文字配列が繰り返し出現することを突きとめました。この反復配列はCRISPR、つまり「規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)」として知られています。

このCRISPRに見られる文字配列は、過去に細菌を攻撃したウイルス由来の外来DNAの切片であることが判明しています。ウイルスを撃退した時に、細菌は侵入してきたDNAの切片を取り込み、同じウイルスの攻撃を受けた場合にそれを検出するのです。 細菌が備えているこの免疫防御システムには、優れた切断・修復機能があります。はさみの役割をするのは「Cas9」と呼ばれるDNA切断タンパク質で、修復機能にはウイルスを特定するDNA情報が含まれています。

科学者は同様のシステムを利用すれば、DNAの特定部位を狙って、正確な位置で切断・新たな配列を挿入できると考えました。また、遺伝子のサイレンシング技術やサイレンシング遺伝子の活性化、配列を追加して新たな機能を生み出す方法についても研究を重ねました。

これまでのところ、「CRISPR-Cas9システム」は極めて用途が広く、効果的に標的を定めることができ、ヒトのがん細胞や幹細胞をはじめ、酵母、魚類、ウサギ、小麦、その他の有機体のDNAを切断・編集できることが判明しています。「編集したいDNAの一部に相当する20文字のRNA配列を設計すれば、「CRISPR-Cas9システム」にDNAの任意の位置で二本鎖を切断させられます」とスミスは説明します。「これは、遺伝子ノックアウト(ある生物に機能欠損型の遺伝子を導入する手法)によって、遺伝子の機能を解明する簡易的な手法であると同時に、正確な遺伝子挿入を実現する容易な方法でもあり、疾患治療に利用可能です。遺伝子治療の可能性を再び活性化する発見として、ゆくゆくは、誰かがノーベル賞を受賞するかもしれませんね」

DNAの塩基対

DNAの塩基対:わずか4種類の核酸(アデニン、シトシン、グアニン、チミン)から成る
数百万個の塩基対がDNAを形成
(画像:ゲッティ イメージズ社)

ゲノム編集技術は今なお開発が進められており、ダーマコンのような事業は研究プロセスを加速させています。ダーマコンでは最近、「Edit-R(エディター、つまり“編集ツール“を意味する名称)」という製品を発表しました。これによって、DNAを切断するCas9タンパク質を標的DNAの特定箇所に導くための遺伝子配列の設計時間は、数週間からわずか数日に。「私たちは、研究者の時間を節約するため、必要とされるステップの削減に取り組んでいます。『Edit-R』は、よりハイスループット(高処理)なテストへも適用が可能なので、生物医学の研究において数百、数千の遺伝子をスクリーニングする際にも使用できます」

迅速で正確なゲノム編集は、研究目的のために疾患を引き起こす突然変異を出現させることから、がんや免疫疾患、その他の疾患のための新たな治療法の発見に至るまで、あらゆる種類の研究機会をもたらすことになる、とスミスは言います。

このゲノム編集ツールは、人間の疾患に対してのみ有効と考えられているわけではありません。作物や家畜の改良に加え、場合によっては蚊の駆除などのプロジェクトに利用することも計画されています。ただし、遺伝子の削除・挿入・修正が可能な「CRISPR-Cas9」は画期的かつ非常に強力なツールなだけに、その活用には大きな倫理的問題も浮上しており、依然として議論は続いています。

そんな中、この4月には中国の科学者が世界で初めて「CRISPR-Cas9」によるヒト胚の遺伝子改変を実施したと発表。この思いがけない報告に、科学界はもちろん、一般の人々の間でも激論が交わされました。こうした強力な科学的ツールを、生まれる前の人間のDNAの改変にまで利用すべきなのか。利用するにしても、あくまで重い疾患や致命的な疾患を引き起こす欠陥遺伝子の修正に限定すべきか。それとも、望ましい特質を持つ人を増やすために使うことも許容されるのか…。

こうした懸念に明確な答えを出すまでにはまだ時間があります。しかし、遺伝子工学がコンピュータコードのプログラミングとなんら変わらなくなってきた現在、この中国の研究発表は、今後直面する課題を指し示した最初の事例と言えるでしょう。

スミスは次のように話しています。「誰もがこの問題をとても慎重にとらえていますね。それは当然のことです。これは非常に新しい技術であり、DNAの一部を編集することで、残りの細胞に何が起きるのか必ずしも断定できていません。遺伝子Xに狙いを定めたのに、図らずも遺伝子YやZも標的としてしまったらどうなるのか、その答えはまだ判明していないんです」



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