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Butyl-S Sepharose 6 Fast Flow
高疎水性生体分子の精製・除去に最適な担体を新開発

疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)においては、サンプルに応じた適切な疎水性の担体を選択することが重要です。たとえばウイルスワクチンをはじめとする巨大分子のように目的タンパク質の疎水性が高い場合、担体との疎水結合が強くなりすぎ、通常の担体では溶出が困難であったり、溶出が可能だとしてもタンパク質を結果的に変性してしまう場合があります。目的タンパク質を変性することなく結合・溶出するためには、適度な疎水性の担体を選択することが欠かせません。
このような背景をもとに開発されたButyl-S Sepharose 6 Fast Flowは、弊社HIC製品の中で最も疎水性が低く、疎水性の高い生体分子の精製や除去に特に適した理想的な担体です。疎水性の高い溶質の精製・除去を効率化することで、Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowはプロセススケールでの精製に多大なメリットをもたらします。


カラム画像

Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowの発売により、弊社の疎水性担体の選択範囲が広がりました。Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowは低疎水性の担体で、高疎水性分子の粗精製または除去に最適です。

特長

  • HIC担体として最も低い疎水性(当社比)を実現し、従来は溶出できなかった高疎水性タンパク質の精製を可能にします。
  • 従来は無かった低疎水性領域をカバーし、疎水性クロマトグラフィーによるタンパク質精製の分解能を高めます。

使用例

  • 組換えB型肝炎ウイルス表面抗原(r-HBsAg)などの高疎水性組換えタンパク質の精製
  • HICタンデムカラムを用いた疎水性タンパク質の除去と至適結合条件のスクリーニング
  • 生体試料からの脂質、リポ蛋白、色素の除去

バイオ医薬品メーカーと共同開発

硬質の多孔性高度架橋アガロースビーズをゲルマトリックスとするButyl-S Sepharose 6 Fast Flow は化学的安定性に優れ、試料添加量が多くても高流速で中圧のクロマトグラフィーが可能です。数百サイクルの定置洗浄(CIP)を実施してもカラムの性能には影響がありません。Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowは、ラボスケールからプロセススケールまで幅広い用途に適しています。さらに、担体はラージスケールで製造しているバイオ医薬品メーカーとの共同開発で、プロセスでの使用が実証済みです。

ロット間差を最小限に

Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowは、スペーサーアームとブチルリガンドの間のリンカーに硫黄原子を用いています。硫黄原子がリンカーとして存在することで、低置換度でもリガンド濃度を簡便かつ正確に計測することが可能です。したがって、担体の各製造バッチにおけるロット間差が抑えられ、安定した製品品質を確保できます。表1にButyl-S Sepharose 6 Fast Flowの特性をまとめました。

表1 Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowの特性
組成 / 6%高架橋アガロース
リガンド / Butyl-S;[-S-(CH2)3] スペーサーを付加して固定
リガンド密度 / 8.9-11.3 μmol ligand/ml
線流速 / ~400 cm/h、1 bar(100 kPa)XK 50/30 カラム、ベッド高15 cm
化学的安定性 / NaOHを含め、一般的に使われるすべての水溶液に安定

HIC担体の溶出プロファイル

図1は、4種類のタンパク質(シトクロムC、RNase A、リゾチーム、α-キモトリプシノーゲン)の混合物を各種Sepharose HIC担体を充填したカラムで分離したクロマトグラムを示したものです。図1の溶出パターンは、Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowは最も疎水性が低く、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(high sub)は最も疎水性が高い担体であることを示しています。この試験では、タンパク質混合物に含まれる各タンパク質がそれぞれ異なる位置でグラジェント溶出されるように、幅広い疎水性を評価しています。低塩濃度(1.7 Mに対し1.2 M硫酸アンモニウム)で試験を行うと、順番の同じ相対疎水性が見られます。

図1

図 1.各HIC担体の選択性

それぞれのカラムを1.7M硫酸アンモニウムで平衡化し、タンパク質混合物(シトクロムC、RNase A、リゾチーム、α-キモトリプシノーゲン)を同一バッファーで溶解しました。グラジェントは1.7Mから0Mまで10CVで送液しました。

【クロマトグラフィーの条件】
カラム: φ10 mm×10 cm ベッドボリューム=5.9 ml
バッファー A: 0.02 M塩酸Tris-HCl、1.7 M硫酸アンモニウム、pH 7.5
バッファー B: 0.02 M塩酸Tris-HCl、pH 7.5
流速: 1 ml/min (76 cm/h) グラジェント: 0-100% B, 10CV
システム: AKTAFPLCTM

【使用担体(上から順に)】
Butyl-S Sepharose 6 Fast Flow
Octyl-S Sepharose 4 Fast Flow
Butyl Sepharose 4 Fast Flow
Phenyl Sepharose 6 Fast Flow (low sub)
PlasmidSelect
Phenyl Sepharose High Performance
Phenyl Sepharose 6 Fast Flow (high sub)

高疎水性目的タンパク質の粗精製

B型肝炎ウイルスの感染蔓延を防ぎ、撲滅させるために、特に中国で、非感染者に対する比較的安価で有効なワクチンの製造に多大な努力が注がれてきました。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の細胞培養上清(CCS)から組換えB型肝炎ウイルス表面抗原(r-HBsAg)を精製するクロマトグラフィープロセスにおいて、Butyl-S Sepharose 6 Fast FlowはCCS中に存在する多種類のタンパク質や不純物を除去する粗精製工程に有用なクロマトグラフィー担体であると実証されました(1)。そのプロセスを図2に示しました。

図2

図 2. r-HBsAgのダウンストリーム

組換えB型肝炎ウイルスワクチンのラージスケール製造における基本工程をまとめました。

【左列】:
CHO細胞由来r-HBsAg粗精製
バッファー交換
中間精製
濃縮
最終精製

【右列】
細胞培養上清
遠心分離またはクロスフローろ過(MF)
Butyl-S Sepharose 6 Fast Flow
Sephadex G25または透析
DEAE Sepharose 6 Fast Flow
限外ろ過による濃縮
Sepharose 4 Fast Flow
r-HbsAg精製品

図3は、非溶解成分を除去したCCS 2LをButyl-S Sepharose 6 Fast Flow 130 mlを充填したカラムでクロマトグラフィー分離して得られる典型的な溶出プロファイルを示しています。3画分のr-HBsAg活性を解析した結果、以下の所見が得られました。

1. 非結合画分(A)はr-HBsAg活性を示さなかった
2. 画分Bには添加したr-HBsAgの90%以上が含まれていた
3. 画分Cにもr-HBsAgが含まれていたが、30%イソプロパノール(バッファーC)への曝露による変性で不活化していた

また、r-HBsAgのダウンストリーム(下流精製プロセス)の初期精製工程にButyl-S Sepharose 6 Fast Flowを使用することにより、以下のような結果を得ました。

・ 不純物の97%以上を除去
・ 活性成分を高収率で回収(90%以上)
・ 初期工程で目的タンパク質を34倍に濃縮
・ 最終濃縮倍率が800倍
・ 全プロセスでの回収率40%
・ 低塩濃度(0.6M)で目的タンパク質の高吸着・高収率を達成
・ 目的タンパク質を変性させるリスクが低い


図3

図 3. CCSからのr-HBsAgの精製

遺伝子を導入したCHO細胞を5%ウシ胎仔血清を含むDubelco's Modified Eagle's Mediumで培養しました。クロマトグラムは初期精製工程(Butyl-S Sepharose 6 fast Flowによるr-HBsAgの粗精製)の溶出パターンを示しています。

【精製条件】
HIC担体: Butyl-S Sepharose 6 Fast Flow
カラム: XK 50/20(ベッドボリューム=130 ml)
サンプル: 濃縮したCCS 300 ml(r-HBsAg 約12 mg含有)。CCSに硫酸アンモニウム溶液を加えて終濃度 0.6Mとし、pHを7.0に調節しました。
バッファー A: 20 mMリン酸ナトリウム、0.6 M硫酸アンモニウム、pH 7.0
バッファー B: 10 mMリン酸ナトリウム、pH 7.0
バッファー C: バッファーBで溶解した30%イソプロパノール
流速: 2 l/h(100 cm/h)

タンデムカラムを用いた疎水性タンパク質の除去と至適結合条件のスクリーニング

Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowカラムは、一連のタンデムカラムの最初に配置し、高疎水性不純物(植物抽出物中の色素など)の除去を行うカラムとして使用することができます。このアプリケーションにおいては、Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowカラムは不純物を結合させるスカベンジャーの役割を果たし、目的タンパク質を結合させる次の高疎水性HICカラムを保護します。カラムの性能はHIC担体、塩、塩濃度の組み合わせで決まります。この用途の成功例がミラクルベリー(Richadella dolcifica、西アフリカ原産)に含まれる味覚修飾物質ミラクリン*の精製です。図4に示した実験では、Butyl-S Sepharose 6 Fast FlowとPhenyl Sepharose 6 Fast Flow(low sub)のタンデムカラムで抽出液を分離しました。
至適結合条件をスクリーニングするのに便利な手段として、段階的に異なるHIC担体のカラムを連結して使用する方法があります。連結したHICカラム(最初のカラムは最も疎水性が低い担体、最後のカラムは最も疎水性が高い担体)にサンプルを添加して非結合成分を溶出した後、カラムを外して適切な溶離液で各カラムで結合成分を溶出します。溶出分画を解析して、どのHIC担体が目的タンパク質の精製に最も適しているか、スカベンジャーカラムの使用が有利かどうかを評価します。この方法は生体試料からの脂質、リポ蛋白、色素などの除去や、トランスジェニック植物で生成した組換えタンパク質の精製に有用です。

図4

図 4. ミラクリンのタンデムカラムによる溶出プロファイル

ミラクリンの粗抽出濃縮液(63 ml)をButyl-S Sepharose 6 Fast Flow(Vt=45 ml)とPhenyl Sephorose 6 Fast Flow(low sub)(Vt=77 ml)を連結したタンデムカラムに添加して得た溶出プロファイル。

プロセス経済性と品質の改善

Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowはプロセスエコノミーを改善します。プロセスの初期段階で、最も疎水性の高い溶質のみ低塩濃度で結合し、比較的疎水性の高い目的分子の結合と溶出、あるいは疎水性不純物の除去を可能にします。疎水性目的分子を変性させるリスクが低いので、高収率が可能です。また、担体を再使用できるので、カラムの寿命が長く、最大限のプロセスサイクル数が得られます。
Butyl-S Sepharose 6 Fast Flowは高品質を実現でき、ラージスケールでの提供が可能です。硫黄原子をリンカーとして利用しているので簡便で正確な定量分析ができ、ロット間変動の少ない均一な品質を保証します。さらに、規制当局によく知られたアガロースを原料とした担体なので、プロセスバリデーションに有利です。

HICシリーズについて

GE Healthcare社のHICシリーズにはマトリクス粒径の異なる担体が揃っています(STREAMLINE、Sepharose Fast Flow、Sepharose High Performance、SOURCETM担体)。各担体は、生体抽出物に含まれるタンパク質の疎水性の度合いに合わせてリガンドの種類や濃度を最適化しています。生体抽出物中の目的タンパク質を高収率、高純度で分離し、変性をできるかぎり防ぐように設計されています。


 脚注

*本品によるミラクリンの分離技術は米国特許No-5,886,155の保護対象となっています。ライセンス権は米国ニュージャージー州サマセットのBioResources International社にあります(BioResources International, Inc., PO Box 6595, Somerset, NJ, 08875, USA. Tel: 1 732-249-8615. Fax: 1 732-545-0663. E-mail: bri@microculin.com)

 詳細な情報

■データファイル
Butyl-S Sepharose 6 Fast Flow : 11-0026-34
■ハンドブック
Hydrophobic Interaction and Reversed Phase Chromatography-Principles and Methods(英文) : 11-0012-69


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