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分光光度計 - バイオ研究を支える身近な物理 - その2

  ※分光光度計 - バイオ研究を支える身近な物理 - その1 もご参照ください。

吸光度を調べて溶液の濃度を測るいうバイオ研究におけるルーチンワークは、物質が光を吸収するという現象を数値化したランベルトおよびベールの功績によります。実はこのランベルト氏、この法則の発見以外にも円周率(π)が無理数であることを証明するなど科学の歴史に多大な貢献をしたすごい人だったのです。

光を吸収するということ

電子がとれる軌道は決まっており、そのために、電子はあるとびとびの状態しかとれません。その状態をエネルギー準位といいます。エネルギー準位の中で最もエネルギーの低い状態(電子がもっとも内側の軌道にある状態)を基底状態、それ以外の状態を励起状態といいます。蛍光検出などでは分子に光をあてて「励起」しますが、これは、電子にエネルギーを与えて、より外側の軌道に移してやることを意味します。

ところで、蛍光色素を使う場合、「励起波長」の光をあててやらないと、蛍光シグナルが得られませんが、これはなぜなのでしょうか?

電子はとびとびの状態しかとれませんので、電子が外側の軌道に移動する際に必要なエネルギー準位の差を埋めるのに適したエネルギーをもった光子からしかエネルギーを受け取ることができません。光子のもつエネルギーは、前回紹介したとおり、波長に比例しますので、特定の色素の励起には特定の波長の光が必要になるのです。

エネルギー準位を階段にたとえると、、、短すぎても、長すぎても使えません

一方、蛍光を発する、とはどういうことでしょう。

簡単な例として水素原子が光を吸収するときのモデルを以下に示します。エネルギー準位が同じ波長の光を照射すると(1)のように準位が変わり、外側に移動します。外側に移動した電子は光や熱としてエネルギーを放出して元の軌道に戻ります(2)。このときの光が蛍光と呼ばれます。
ちなみに、光から得たエネルギーをそのまま放出するのであれば、同じ波長の蛍光が得られることになりますが、実際には振動緩和や内部転換といった過程でエネルギーをいくらか失った状態の電子が、元の軌道に戻ることになりますので、放出される光のエネルギーは低い(つまり波長が長い)ものになります。これが、励起波長に比べると必ず蛍光波長が長い理由です。

光の吸収~水素モデル
(1)エネルギーを受け取った電子が外側の軌道に移る、(2)エネルギーを放出して電子が内側の軌道に戻る

これは1原子におけるモデルですが、複数の原子が複雑に結合した化合物になると単純にはいきません。生体分子の中で光を吸収するのは金属イオンを持つ分子と、大きな環状構造や共役二重結合を持つ分子の2通りに大別されます。前者は金属タンパク質やビタミンAなどに代表されます。後者は一般的なタンパク質および核酸が例として挙げられます。タンパク質は環状構造もつフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどのアミノ酸残基を多く持つため紫外領域の光を強く吸収します。また、核酸の構成成分となるヌクレオチドは全種類で紫外領域の光を吸収します。表からタンパク質は250~280 nm 、核酸は250~270 nmの波長の光を吸収することが分かります。

表 環状構造をもつアミノ酸・核酸

物質名
λmax
(nm)
フェニルアラニン
257
チロシン
275
トリプトファン
280
アデノシン 5'-リン酸  
259
シチジン 5'-リン酸
271
ウリヂン 5'-リン酸
262
グアノシン 5'-リン酸
252

これらの生体分子の吸光測定する際に容器や溶媒が測定する波長の光を吸収しないか確認する必要があります。下記にバイオ研究で使用される主な溶媒・物質が吸収する波長域を示しました。紫外領域に吸収を持つ物質をサンプルとする場合は石英セルを用います。ガラスセルは紫外領域を吸収するため使用できません。

実験でよく用いられる溶媒・物質の150~350 nmにおける吸収
エタノール、水、石英は230-280 nm付近に吸収はありませんが、ガラスだと吸収してしまいます

※ 吸収のない部分が白色。

吸光度は濃度・距離が関係している

物質がどれだけの光を吸収するかは、その光の光路の長さと、光路中の分子の数つまりは濃度に影響を受けます。光路が長ければ長いほど多く吸収され、分子が多いほど多くの光を吸収します。ただ、距離や濃度が2倍になると吸光度も倍になるかというとそうではありません。光路長を倍にしたときの吸光度のモデル図を下記に示しました。50%の光りを吸収する光路を用意します。それを2つつなげたと仮定します。最初の光路では入射光強度(I0)の50%の光りが吸収され、0.5 I0の光りが通過します。次の光路でも50%の光が吸収され最終的には0.25 I0の光りが透過することになります。

光路の長さを倍にしたときの透過光強度
光路の長さを長くすると、透過光の強度が下がります

濃度と光路との関係はランベルト-ベールの法則と呼ばれ、下記の式で示されます。

log(l0/l)=epsilon*c*l epsilon:モル吸光係数 c:試料のモル濃度 l:光路長

ランベルト-ベールの法則発見までの道のりを簡単にご紹介します。1729年にPierre Bouguerが大気中を透過した光が減衰していることを発見しました。1760年にはLambert Johann Heinrichが吸光度は光の透過する長さに比例することを発見し、さらに1850年にAugust Beerが透過する物質濃度に応じて光の強度が一定の割合で減少することを発見しました。LambertとBeerとがそれぞれに発見した事象をあわせてランベルト-ベールの法則と呼ばれています。

ちなみにLambert氏は哲学者、数学者、天文学者という数多くの肩書きを持っています。さらに円周率πが無理数であることを証明し、丸い地図でおなじみのランベルト正積方位図法を発明するなど多くの偉業を成し遂げています。

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